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佐藤 壽三郎

Author:佐藤 壽三郎
1947年8月生まれ

趣 味 囲碁・歴史考察・墨書

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千曲のかなた: 須坂市議会議員 佐藤壽三郎
「千曲のかなた」の由来は、郷土が全国に誇れる大河 「千曲川」と、千曲川のかなたに連なる信濃五岳、北アルプスや四方の山並を超えて遠望する私のねがいです。  「千曲のかなた」を通じて私は故郷から巣立った青年たちに熱いエールと郷里の情報をおくり続けます。「ふるさとは永久に緑なりき」と・・・
名作と言われる本を耽読したい
晩菊

 林芙美子著の「晩菊」を読みたくて蔦屋書店に出向く。店員さんに「晩菊」の取寄せ依頼をするが、どうも新刊では在庫はないようであった。
 古本で探そうとBOOK-OFFに立ち寄った。文庫コーナーを隈なく探したが、林芙美子作品の「放浪記」はあっても「晩菊」は見つからなかった・・・
読みたいと思うと、何が何でもその日の内に読みたいのが心情。そこでネットの「青空文庫」が最後の手立てであった。

 扨、「晩菊」に入ろう・・・
 女盛りを些か過ぎた五十六歳の主人公であるきんに、ある日かっての愛人田部から「逢いたい」との電話がかかって来た。きんは田部に「自分の老いを感じさせては敗北だ」と、電話を切るなり銭湯に行き、帰つて来るなり「鏡の前で十分ばかりもまんべんなく氷で顔をマッサアジ」をする女心を見せる。きんは「女の年なんか、長年の修業でどうにでもごまかしてみせる」と云ったしぶとさで、更に「取つておきのハクライのクリームで冷い顔を拭いた」念の年の入用。然虚しい努力と言うべきか足掻きとでも言うべきか彼女が覗き込む鏡の中には「死人のやうに蒼ずんだ女の老けた顔が大きく眼をみはつてゐる」と女流作家林芙美子ならではの、繊細な具体的描写と老いてゆく女性の不安と慄きを描く筆使いは、流石一流の作家と感じた。

 きんは、「金貸しを行うことによって小銭を蓄えている」らしいが、清濁合わせての今までの生き方に対する良心の呵責なのであろうか「むごたらしい殺され方をしさうな自分の運命を時々空想する」何某の畏怖を抱いた女であると、芙美子はものの見事に描き出している。

訪ねて来て、金の用立てを執拗にせがむ田部も、ウイスキーによって泥酔する。田部の火箸を握っての挙動にきんは殺意を感じた、無理に押し返せば、居直り強盗にでもなりかねないと状況を察したきんの脳裡に、「むごたらしい殺され方をしさうな自分の運命を」を回避するためなのか、田部に「貴方、酔つてるのね、泊つて行くといゝわ……」と油断をあたえ、田部は火箸を元に戻すシーンは圧巻だ。

翌朝素面になった田部を追い帰そうとする件(くだり)はきんの強かさを示すものであろう。小説はその後の記載が無いまま終わるが、きんが無事であったか、田部が金から金品を強奪達したのかは読者の判断に託されている処が心憎い。

 一線を越えてしまった男と女の関係は、竹を割ったようには行かない。寧ろ陰に陽に人生に柵を残すものであると作者林芙美子は言いたいのであろうか。芙美子自身の生涯をオーバーラップしたとも思える筋書きである・・・

 信州山之内町にある角間温泉は、林芙美子の縁(ゆかり)の温泉である。芙美子が愛した温泉を訪れては、湯舟に浸かりながら小説「晩菊」の筋書きを追うも又一興である・・・

 名作と言われる本を兎に角も読みたい齢である。

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