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佐藤 壽三郎

Author:佐藤 壽三郎
1947年8月生まれ

趣 味 囲碁・歴史考察・墨書

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千曲のかなた: 前市議会議員 佐藤壽三郎
「千曲のかなた」の由来は、郷土が全国に誇れる大河 「千曲川」と、千曲川のかなたに連なる信濃五岳、北アルプスや四方の山並を超えて遠望する私のねがいです。  「千曲のかなた」を通じて私は故郷から巣立った青年たちに熱いエールと郷里の情報をおくり続けます。「ふるさとは永久に緑なりき」と・・・
青春の記憶 4
「西洋のうどん」

昭和42年の春、上京したての頃の話である・・・
晩飯を取ろうと、下町はとある街中の食堂に入った。この食事時なのに然も店の構えはそれなりであるのに、客は一人でしかなかった。はてなと思いながら椅子に座ると、この店が盛らない理由が分かった。店内は猫の小便臭さが鼻を突くほど酷かった。然も店の奥には、ドカンと座った店番の老婆が番台に鎮座して、更に膝のうえには、小便臭さの元凶であるまるまる肥えた化け猫がいるではないか。ばあさんは鼻がバカになっているのか、一向に臭いが苦にならないらしく、ネコを無意識に撫でている。とても「招き猫」ではなく、この店にとっての疫病神ではないか・・・

壁一面に貼られたメニューを見渡したが、この店は和食・中華・洋食と何でも調理できるのが自慢の店らしく、やたらに料理名が壁に書かれていて、何を注文してよいか迷った。
ふと目の前の一人の客が旨そうに食べているものに目が行った・・・
実に旨そうに食べているではないか。「俺も同じものを食べてみたい」気になって壁のメニューを見渡したが、そもそも料理名が分からないので注文のしようがない・・・

そこで、未だ年端のいかない少女の面影が残る女給を、手招きして呼び寄せ、
小声で・・・
「あの人が食べている。西洋のうどんみたいなものは何という料理かい?」
 と指さすと、
女給は相手の料理を確かめて、大きな声で私に
「ナポリタンです。」と、教えてくれたがバツが悪い。
小声で教えてくれれば良いものを、機転の利かない女給の大声に大恥をかいてしまった。やはり未だ少女なんだなと感じた・・・
「それを一つ」と言うと、
「ナポリタン 一丁」と調理場に向けて、女給は大声で注文を告げた。
「ナポリタン一丁。あいよ」と調理場から、これまた大きな声が返ってきた。

料理が出来上がるまでの間、先客の食べ方をさり気なく見ていると、ホークに麺をからめては口に運んでいる。なるほど、からめて食べるのかと食べ方を覚えた。これは「東京に出て、食べ方が分からなかったら、人様の真似をしなさい。」と母から恥をかかない教えを守っての行動である・・・

ネコの小便臭さにも鼻が慣れる頃、私のテーブルに「西洋のうどん」が運ばれてきた。
そこで箸で食べることはせず、気取ってホークにからめてから口に運んで食べてみたが、旨い 実に旨い
西洋のうどんは丼では無く皿に盛られていて、蕎麦でもうどんでもない太さであった。舌触りが全く違う。然も皿の底にだし汁が無い。ケチャップが麺にからまっている分、口の中で麺の味も濃く感じた。そばやうどんは喉越しで味わうが、スパゲティーは舌で味わうものと感じが、これが実に旨い代物であった・・・

スパゲティーは色々な味付けがあることを、その後の東京生活で知ることになるが、私はナポリタンソースに拘る。西洋うどんとの出会いがナポリタンであったからかもしれないが、この歳になってもナポリタンを口にするたびに、遠い遠い上京したての頃の、下町のとある大衆食堂での一コマを思い出す・・・


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