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佐藤 壽三郎

Author:佐藤 壽三郎
1947年8月生まれ

趣 味 囲碁・歴史考察・墨書

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千曲のかなた: 前市議会議員 佐藤壽三郎
「千曲のかなた」の由来は、郷土が全国に誇れる大河 「千曲川」と、千曲川のかなたに連なる信濃五岳、北アルプスや四方の山並を超えて遠望する私のねがいです。  「千曲のかなた」を通じて私は故郷から巣立った青年たちに熱いエールと郷里の情報をおくり続けます。「ふるさとは永久に緑なりき」と・・・
名画はいつまでも心に宿る
【青春の記憶2】 ピンレバ時計がコチコチと

 二十歳にして法律を学べる機会を得た私は、勇んで上京する際に長野駅まで送ってくれた義兄が、大学入学祝いにと金張りの角時計を腕から外して、「頑張れよ」と手渡してくれた。
 門出に戴いた金時計であったが、大学4年頃のある日のこと、時計はうんともすんとも動かなくなってしまった。大学近くの時計屋に修理を頼んだら、「修理は不可」とのことであった。今と違って時計が動かなくなると、改めて何か不便であると気が付いた・・・

 そこで、新宿に出たついでに、当時流行りのピンレバ時計を歌舞伎町の盛り場にある、時計屋と言うより雑貨店で買い求めた。今までの時計と違って、毎日ネジをくれることが、自動巻きに慣れていた私にとっては苦痛となった。更にピンレバ時計の難点は、時を刻む歯車の「コチ・コチ」音が大きいことであったが、日中の都会の雑踏のなかでは「コチ・コチ」音は、一向に苦にならなかったが、静かな図書館や寝る前に時計を外して卓上に置くと、「コチ・コチ」音は、はっきりと目覚まし時計に負けないくらいの「コチ・コチ」音に聞こえた。

 悲劇は突然襲うものである・・・
 それは、「暗くなるまでまって」という、オードリーヘップバーン主演のサスペンス映画を鑑賞する機会を得たときのことであった・・・
 ストーリーが転回して愈々クライマックス時に入る前に、「これから数分間は、映画を盛り上げるため、劇場内の非常口灯を消灯し、場内は音も光も無くなる企画です。どうかご協力ください。」とスクリーンに表示されて映画が再開された・・・

 ところが、ところが私の腕時計の「コチ・コチ」と刻む音が、静かな場内に俄かに響くではないか。私の付近の観客から「時計がうるさい!」と怒鳴られる始末である。私は腕時計を外して背広のポケットに入れたが、「コチ・コチ」音は一向に消えない。あちこちのポケットに移すも、「コチ・コチ」音が一向に消えない。私は焦りながらも考えた末、革靴を脱いで時計をハンカチで包んで、靴の爪先に押し込み、更に私の足で靴のホドとしたら、「コチ・コチ」音は漸く静になった・・・
 
 そんなわけで、名画「暗くなるまでまって」のクライマックスシーンの前半は、てんやわんやと重なってスクリーンに目が行かず、筋書きもうつろとなってしまったが、、「コチ・コチ」音が静まった後半部分は、十分に映像を見入ることが出来た。

「ローマの休日」のヘップバーンと、この「暗くなるまでまって」のヘップバーンは、まるっきり別人であるかのように思えた。「ローマの休日」のヘップバーンは将に初々しい王女を漂わせる振る舞いに、少年であった私は無辜な王女に憧れを抱いたものであるが、「暗くなるまでまって」のヘップバーンは、演技派女優として成長されて、味のある大人の演技で盲目の女性を演じ切っていた。

「暗くなるまでまって」の映画の鑑賞は、とんだハプニングがあった分、余計に青春時代の忘れられない映画となった。




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